【キーパーソンが語る】木曽移住者対談

加藤 大雪さん×木村耕紀さん
アウトドア好きと友人の誘いがきっかけに
《加藤》 キャンプやアウトドアが好きで古民家や別荘を探す中で、初めて王滝村に来ました。その時に見た家を、村の空き家バンクを介して購入し、修繕しながら暮らしています。仕事は移住サポートセンターでバスの運転手を紹介してもらい、空いた時間は集落支援員として草刈りや除雪作業をやっています。今は山の中に暮らしているので、生活そのものがキャンプみたいです。
《木村》私は友だちが先に移住していて面白い所があるよ、と誘われて来ました。それから地域おこし協力隊になって、空き家を紹介していくうちに、これは続けていかないとと思うようになりました。町の成人式やイベントを撮影する映像の仕事もしています。人とのつながりで仕事の依頼がくるのでうれしいですね。地域で必要とされていると感じ、「ありがとう」と言われる。私は、自分のやっていることが人に必要とされているかどうかということを大切にしているんです。子どもと遊ぶ時間も含めて、今はやりたいことが全部できるようになったので、ここにずっと住み続けられるなと思うようになりました。
《加藤》バスの運転をしていると、日常的にお客さんと1対1になるんです。「朝早く迎えに来てくれて助かったわ」「おかげで病院に行けるよ」という言葉も。お父さんお母さん世代の人たちを乗せていると、その息子さんや孫世代の方とも、だんだんつながっていきます。消防団に入ってるんですが、狭いからみんな知り合いという環境です。
《木村》消防団の活動は大事だと思います。将来は社長となり地域経済を支えていくような人がいたり、もちろん同世代や同級生がいたりする。仕事だけでは絶対つながれないような人たちとつながることができます。
《加藤》僕は去年、狩猟と銃の免許を取得して、イノシシを3頭捕りました。夏祭りで知り合った猟友会の方にさばき方を教えてもらって、自分で解体しました。「シーズンに1頭でも捕れればいい。狩猟をやりたい気持ちが大事だ」と声を掛けてくれます。応援してくれる雰囲気があるんです。最初の年は、薪(まき)不足で暖も取れない僕の状況を知ると、夕方に近所の方が軽トラックで薪を持ってきて助けてくれました。なので今シーズンの冬支度は、しっかりしました。
《木村》初めは自分が何が分からないのかを理解できていないけれど、だんだん質問できるようになり、誰に聞いたらいいのかも見えてくる。地域の中に役場職員がいると、移住者もその人に聞いてみようかなと思うことが多いんです。
《加藤》 おばあちゃんたちも親切で、 畑で採れた野菜やお漬物をもらったりします。伝統料理もあり、ウズラのこうじ漬けは衝撃でした。「骨ごと食べれるよ」と言って渡されたんですが、ウズラが丸ごと入っているんです。見た目はショッキングですが、とってもおいしかった。
《木村》良くも悪くも、お節介を焼いてくれる習慣がある。それで気が合う人たちと交流が深くなってくると、別の付き合いが始まることもある。村に溶け込んで親しくなった人たちとの関係が深まると、最初に面倒を見てくれた人たちと距離ができることもありますね。
方向性を決めたら、あとは柔軟に対処を!
《木村》いろいろな移住者に言うんだけど、自分の道をはっきり決め過ぎると、つまらないし、つらくなる。方向性や生き方を決めておくぐらいがいい。いろいろな可能性を持っていた方が力が抜けるし、少し待ってみることも必要。自然との関わりが深いから思い通りにいかないし、スピードが遅いと感じる時もあるけれど、自分でしっかり考えて動く波に乗っていけば別に気にならない。木曽の人は深く考えることに慣れていて、その姿勢からすごく教わったし、その生き方は大自然を相手に対処しながら生きている木曽ならではの特徴という印象があります。
《加藤》なるほど。住んでいる家の改修は、うまくいってる感覚はないですね(笑)。 腐っていた柱を2mほど替えたり、薪ストーブ用の煙突を通したり。その都度トラブルが起きて、どう対処するか考えています。これからの方向性については、キャンプ場をやってみたいと思っています。
《木村》 いいね。キャンプをしたい人は多いと思う。住んでみると大変なんだけど薪割りをやってみたいという都会の人もいるし。だからバスの運転手と両方やったら面白いかな。生活基盤をつくる仕事と、自分の楽しみとしての仕事と。
《加藤》そうですね。僕はキャンプ場を、楽しいだけじゃなくて、自然の中で暮らすノウハウを伝える施設にしたいと考えています。森から木を切って薪を作ったり、小屋を建ててみたりとか。農地を作るとかでもいいんですが、単に1泊、2泊するキャンプ場ではなく、通年で楽しめるようにしたい。木曽に来て、支障木の伐採や有害鳥獣駆除の仕事もしているんですが、山の近くで成立している生活システムを吸収して、そんな暮らし方を伝えていける場所にしたいんです。
《木村》外から来た若い人が、森林を活用してきた文化や歴史を継いでいってくれるのは、地元の人も喜ぶんじゃないかな。10年住んで感じるのは、上の世代との付き合いが多い中で、同世代を探すことが大事だということです。1人でも2人でも同級生がいるだけで、なんかほっとする。同じ地域で、同世代が働いているだけで、仲良くなれる可能性もあるし。お互い気楽だったりしますよね。その上で、伝統だったり技術だったり木曽らしさを記録して、伝えていくことを大
切にしたいと思っています。